平成28年度 戦略的基盤技術高度化支援事業
H28-H30 患者と医師双方の負担を軽減するためのワイヤレス給電技術を利用した消化管内自走式カプセル内視鏡の開発
概要
医療機器の高精度化と共に、患者、医師への負担軽減が望まれている。本提案では、なめらかな外形で消化管内を傷つけずに、①マイクロアクチュエータ技術により消化管内を前後に自走できることで病変部の見落としがなく、②体外からのワイヤレス給電技術により1時間駆動可能でリアルタイム診断を可能とする、「消化管内ワイヤレス給電自走式カプセル内視鏡」を開発する。
内視鏡は、消化管内を直接観察できかつ簡易な治療も可能という利点があるが、観察中常にチューブが喉や鼻の中にあるため、患者への苦痛が課題である。カプセル内視鏡については、検査中苦痛がないという利点があるが、腸の蠕動運動による移動のため検査に8時間ほど必要で、検査後にまとめて画像を見るという使い方になる。このため1回の検査で通常6万枚の画像を2~3時間でチェックすることになり、医療従事者にとっての大きな負担となっていることから、カプセルが自走可能であれば、検査時間の短縮につながる。
ワイヤレス給電自走式カプセル内視鏡
連携
株式会社ロジカルプロダクト、九州工業大学、株式会社パイオラックス、東京農工大学
結果
株式会社ワークスは、今回のワイヤレス給電自走式カプセル内視鏡の開発の中で、「ボディ設計と金型設計製作技術および精密成型技術の開発」を担当した。
1年目は、カプセルボディ設計を行った。厚みを従来の半分の0.5mmにしたカプセル成形のため、射出成形可能な金型の概略設計を行った。さらに、精密射出成形機およびクリーンブースを導入し、サンプル金型等を用いて、成形金型搭載のために金型内に流し込む樹脂のゲート形状やゲートの位置、樹脂注入時の金型内エア抜きのためのエアベント位置等の構造検討を行った。また、樹脂射出圧力や射出速度、金型温度や成型後の保圧、保圧時間などの射出成形条件等の事前検討を行った。
2年目は、樹脂製カプセルボディ厚み0.5㎜のテスト用金型設計、試作とその金型を使用した射出成形テスト及び成形品の離型性評価を行い、金型構造と成形・離型性に問題がないことを確認した。また、成形品の形状精度及び勘合精度の確認評価を行い、カプセルの寸法精度に問題がないことを確認した。
3年目は、評価結果に基づき、カプセル搭載用カメラモジュールや駆動用アクチュエータ、制御用フレキシブル基板、その他のワイヤレス給電用部品等を適正にカプセル内部に収納可能な改良版樹脂製カプセルボディの金型設計、金型製作と射出成形テスト、カプセルボディ成形品の構造評価を行い、目標値を達成した。
カプセル写真
カプセルの構造
カプセル金型写真
金型を射出成形機に取り付けた様子
全体的な結果としては、イヌを用いた動物検証実験を行い、カプセル内視鏡がワイヤレス給電で、腸管内移動、映像伝送できることを実験により検証した。
イヌを用いた動物検証実験