平成25年度 ものづくり中小企業・小規模事業者試作開発等支援補助金

H25 精密微細機械加工技術を利用した先端ドラッグデリバリー技術の事業化

 

概要

無痛針は、ドラッグデリバリー技術として、以前から医療、化粧品業界から、期待されている技術であるが、微細な針形状は、とても微細なためにフォトリソ技術でしか製作されていなかった。しかし、フォトリソ工法では無数の微細針の形状を、三次元形状に均一に製作することは、技術的に困難であるために機能的な効果が十分満足できるものになっていない。また、高コストであるために、試作研究開発が容易にできない課題がある。
そこで、当研究では、微細精密機械加工技術を使い精密で微細な針形状を作りドラッグデリバリー分野促進に応用する技術を確立する。

 


フォトリソ工法と微細精密加工法での針形状の比較

 


無痛範囲投与イメージ図

 

 

連携

福岡県工業技術センター機械電子研究所・新興セルビック

 

 

結果

1. マスター金型の製作

400針のマイクロニードルアレイ・マスター型を設計し、当社の特殊な精密加工技術を用いて400針無痛針マスター型の製作を行った。
【設計内容】
材質:SUS304、28mm×28mmの台座に20mm×20mmの400針の無痛針
ニードルのサイズ:φ0.5mm×高さ0.65mm

 


400針マスター型

 


ニードル

 

400本の針を一気に連続加工する為、工具の耐摩耗性や切削性能等が必要となる。この課題を解決する為の研究を行った結果、仕上げ用工具、エンドミルφ0.4×R0.05×1を使用し、仕上げ加工の部分を分けることで、バリの発生、先端曲がりの課題を解決することが出来た。

2. 試作研究用鋳型の設計、製造技術の確立

ⅰ. サーボプレスを使用して、機械加工で成型したマスター凸型を、鋳型材料に転写プレス成型評価を行った。(福岡県工業技術センター機械電子研究所にて)

 


研究開発イメージ図

 

ⅱ. 特殊小型成型機を使用して、機械加工で成形したマスター凸型で鋳型の射出試作テストを行った。

・機械加工で成型した400針のマスター型を、試作研究用のユニット金型に組み込み、射出成型により、逆形状のテフロン鋳型を成形した。

・鋳型用に使用したテフロン:PFA 420HP-J
耐熱性、耐薬品性あり。高純粋性、薄肉・細物成型用として、射出成形や電線押し出し成型などの成型法で、主に小型・薄肉射出成型部品や薄肉電線などの用途に使用されている。

 


400針のマスター型が組み込まれた
オリジナル特殊小型射出成形用ユニット金型

 


特殊小型成形機
新興セルビック製C.Mobile-0813

 


完成したテフロン鋳型

 

樹脂製鋳型をほぼきれいに成形することができ、加工条件を確立することが出来た。

3. マスター金型を付加価値のあるものに発展させるために、無痛針製造販売システムを事業化の基盤を整備する。

・ポリ乳酸を原材料とした溶解型の無痛針製品の成型加工条件を確立する。
溶解型無痛針製品の製造プロセスとして、製造したメス鋳型に薬剤を充填・固形化させ、転写性良く離形させ、製品を製造した。

 


溶解型400針ポリ乳酸無痛針製品 (右図:100倍拡大)

 

ポリ乳酸をほぼきれいに成形することができ、加工条件を確立することが出来た。

・試作した無痛針製品の拡大モデルを使用して、販路開拓を行う。
試作品を活用し新規顧客へPRするため、また情報収集の為、展示会に積極的に出展した。(オリジナルのA1ポスターも作成しPRを行っている。)

 


無痛針製品拡大モデル

 


各展示会での無痛針製品の拡大モデルを使用してのPR

 

・事業化に向けた情報収集や新規顧客開拓の為、神戸医療産業都市の会員となり、積極的なPRを行う。

 

 

今回実施した事業で得られた成果

1. 400針の無痛針マスター金型の製作
2. オリジナル・テフロン鋳型を射出成形製作及びテフロン鋳型の特許出願
3. 成形金型を製作及びポリ乳酸製の400針の射出成型成型システムを販売する事業基板が出来た。