平成24年度 福岡ナノテク推進会議 ナノテク実用化展開事業

H24 消化管内走行カプセルの開発実用化

 

概要

胃や腸の消化管内の検査、治療は、病気の治療、予防にとって重要である。現在は内視鏡による検査が主流であるが、患者の負担を減らし、内視鏡の届きにくい小腸の検査のために、カプセル内視鏡も使われている。しかしカプセル自身では移動できないため、検査に約1日かかっている。このカプセルが自走できれば、検査にかかる時間や患者の負担を大幅に軽減できる。そこで、消化管内の周りを傷つけることなく走行できるカプセルを研究開発し、さらに投薬機構も搭載して、ドラッグデリバリにも活用できることを目指すものである。

 

 

連携

九州工業大学・福岡工業技術センター
飯塚病院・㈱ロジカルプロダクト

 

 

結果

1. カプセル駆動部メカニズムの小型化
人が呑み込める大きさのカプセル(直径11mm、長さ25mm)に収まる駆動機構を完成した。駆動機構のサイズは、目標値である直径6mm、長さ10mmに収まるものにできた。

 

    
駆動機構(中央部分)          カプセル内実装の様子

 

消化管内走行カプセルの走行原理は非常に簡単であり、コイルと磁石のみで動くことができる。内部の磁石が移動することによって、振動によりカプセル全体を移動させている。カプセルの移動に使われる機構は、すべてカプセルの内部に搭載し、カプセルの表面にはまったく突起物がない。すなわち、人体に傷をつけることなく消化管内を移動することができる。また、動作原理が単純であることから、部品数も少なく構造も簡単であり、小型化しやすいという利点を持つ。

 

2. 走行カプセル本体の開発
カプセル本体(直径11mm長さ24.5mm)を作製し、駆動部、回路、電源を一体化収納し、動作確認を行った。

 

 

 

走行性能も従来の一体型と比較して同等以上であることを確認
Type
走行速度
Macrocosm従来の一体型
8.23[mm/s]
New model本事業開発型
8.34[mm/s]

 

3. 走行カプセル内に実装可能な投薬機構の開発
走行カプセルに搭載可能な、微小投薬機構(サイズ2mm)
・半導体応用のMEMS技術により、微小な薬液タンクを作製
・ドラッグデリバリに応用する

高分子ゲル(ポリアクリル酸Na)を用いて、加工と封止を簡単化
電流を流すとゲルが変形し、放出孔が開きリザーバー内の薬液が拡散する

 

 

  
電場印加前                電場印加後

 

外界から水が混入し,タンク内液体の色の変化により放出の確認を行った。
実際にカプセルに実装した場合の投薬指令は無線の送信機より行う。

 

 

まとめ

自走式カプセルの駆動機構は、非常にユニークであり構造的にもシンプル。今後、この駆動機構を搭載した搬送装置などへの転用も可能なため、医療分野以外の分野(例えばマイクロロボットなど)への展開も視野に入れて進めていきたい。